昔から、人の意見は素直に聞くべきだと教えられてきた。
特に、年長者の意見はタメになることが多いから真摯に受け止めるべきだと。
しかし、私は常々疑問に思っていた。
今まで人の意見を聞いたからといって、それが必ずしも良い方向に向かうとは限らなかったからだ。
そのことは、私以外の多くの人も経験していることだろう。
もちろん、中には意見を聞いて良かったと思えることもある。
この違いは何なのだろうか。
これに関しては、私の中ですでに結論が出ている。
それは、意見を聞く相手が正解か間違っているか、の違いである。
今回は、意見を聞く相手選びの大切さとその見定め方を伝えたい。
意見を聞くべき相手
ただ闇雲に人の意見を聞いても良い結果は得られない。
私事だが、つい先日もそのことを彷彿とさせる出来事があった。
知人から「楽な仕事があるからやらないか」と誘いがあったのだ。
仕事にできる限り労力を注ぎたくない私にとっては、願ってもない誘いであり、すぐに了承した。
だが、いざその仕事をしてみると、知人の話とは違い全く楽ではなかったのだ。
知人の話では、ただ黙々と作業をしているだけでいいと言われていたが、実際は人との連携が多く、何より覚えることがとても多かった。
事実が判明した瞬間、私は心の中で思わず「騙された!」と叫んだ。
しかし、冷静になってみると、そうではなかったのだ。
実際は私が騙されたのではなく、その仕事が知人にとっては楽な仕事であっただけの話なのである。
よくよく考えてみれば、その知人は優秀な人物だった。
接客業の経験が豊富で対人能力が高く、性格も私と違ってアクティブな人間である。
そういう人間だからこそ、今回紹介してきた仕事も楽に感じたのだろう。
今回の私の失敗は、そういった相手の性質を失念していたことだ。
このことからもわかるように、意見を聞く相手は、できる限り自分と似た性質の人間にするべきなのだ。
意見を聞く相手が自分と似た性質であればあるほど、その意見は良い結果に繋がる可能性が高い。
逆に、自分と性質の違う人間の意見は、自分にとってマイナスになる可能性が極めて高くなる。
過去の私と同じように、人の意見を聞くことが大切だと教えられてきた人は、このことを心に留めておいてもらいたい。
意見を聞いてはいけない相手
意見を聞く相手は自分と似た性質の人間にするべきである。
これが私の人生観から導き出した答えだ。
それと同様に、「意見を聞いてはいけない相手」というのも、私の中では明確な答えが出ている。
それは自分の親だ。
驚いた人も多いと思うが、親の意見というのは自分の人生を悪い方向に向かわせる可能性が高いのだ。
その理由として、まず第一に挙げられるのが、親は子供のことを理解していない場合が多いからだ。
一番近くで見ているはずの親が子供のことを理解していないとはどういうことなのか。
それは、親が子供を色眼鏡を通して見ているからである。
「親バカ」という言葉があるように、多くの親は自分の子供を特別視してしまう。
「自分の子供は特別だ」と信じて疑わず、本来の子供の能力以上に過度な期待を持ってしまうのである。
中には子供を特別視するあまり、自分の叶えられなかった夢を子供に託す親もいる。
当の本人には全くその気がないにも関わず、子供の進む道を強制的に決めてしまうのだ。
表向きは「お前の将来のタメになる」と言っていても、実際は親が自分のタメに言っているだけ、というケースが非常に多い。
子供を自分の理想通りに育てることで、自分の顕示欲を満たそうとしているのである。
まさに身勝手な意見の押し付けだ。
恐いのは、こうした親の意見に従い、それが人生の成功だと誤解してしまう人が多いこと。
そうした人達は、後から自分の人生に後悔する確率がとても高い。
自分の人生を自分で歩んでこなかったのだから当然だろう。
もし、これを読んでいて心当たりのある人は、一度自分の人生を思い返してもらいたい。
もしかしたら、あなたの人生は親の意見が強く反映されているかもしれないのだから。
正しい相手から意見を聞くことの大切さ
親の意見を聞いてはいけない理由は他にもある。
それは、今の時代は親の時代の成功論が全く通用しないからだ。
【良い大学、良い会社に入ることへの幻想】でも話したように、今の社会情勢は親の時代とは全てが違う。
親の時代には成功が約束されていたルートでも、今では同じ道を辿ったからといって成功できる保証など何処にもない。
むしろ、人によってはそのルートを辿ることで不幸になることさえある。
時代は進み、労働者に求められるものは昔より格段に増えた。
それに伴い、働くハードルもどんどん上がってきている。
皆が皆、普通のサラリーマンになれば中流の幸せを得られた時代は終わったのだ。
しかし、親の世代はそのことを理解していない。
だからこそ、世間一般の「普通」とは違う道を子供が歩もうとすれば、問答無用で拒否してくる。
例えば、親に「歌手になりたい」と言えば、大抵の場合は拒否されるだろう。
だが、そういう時でも自分という人間の性質を知っていれば、それを活かすことができるのだ。
自分が「普通」の会社員として働くことと、歌手を目指すのではどちらが幸せになれる可能性が高いのか。
もちろん、それは結果だけでなく過程も含めてのこと。
こういったことは親に相談しても全くの無意味だ。
前述したように、親の中では答えは最初から決まっているのである。
意見を聞く時は、できる限り自分と似た性質、環境、立場の人間の意見を聞くことが大切だ。
そのうえで、自分を客観視すること。
これこそが、今の時代を幸せに生き抜くための秘訣である。
一見して社会不適合者に見える人でも、何かに秀でている、ということは多々あることだ。
どうか、自分の可能性を閉ざさないように、人の意見を聞く時は、意見を聞く相手を見誤らないでもらいたい。
あなたが正しい相手から意見を聞き、自分の人生を良い方向に向かわせることを願っている。