2017年10月22日、第48回衆議院選挙が行われた。
今回の選挙では憲法改正や消費税増税など、今後の与党の方針が問われる重要な選挙だった。
当日は台風の影響もあり、戦後2番目に低い投票率となったが、期日前投票では過去最多ということで、世間からの関心の高さがうかがえる。
だが、そんな状況の中でも相変わらず若者の投票率は低い。
総務省の発表によれば、18歳は50.74%、19歳は32.34%で、全年代平均の投票率53.68%を下回っている。
速報値なので確定ではないが、それでもこの数値は残念としか言いようがない。
2016年から18歳に引き下げられた選挙権だが、若者はその権利をまるで行使していない。
若者はなぜ選挙に行かないのか。
今回はそのことを考察し、どのようにすれば若者の投票率を上げられるか、その自論を述べる。
若者の投票率が低い理由
日本の政治家が掲げる選挙公約のほとんどは、高齢者向けの政策ばかりだ。
自分の当選を考えれば、投票率の高い高齢者に関心を寄せるのは当然なのかもしれない。
しかし、日本のことを本当に考えるなら、少子化対策や就職支援など、もっと将来を見据えた政策に力を入れるべきなのだ。
そういう意味で、私は今回の選挙に期待していた。
若者の投票率が上がれば、政治家達は自然と若者に目を向けるようになると思っていたからだ。
だが冒頭で述べたように、結果は全くの期待外れだった。
政治家達に若者へ目を向けさせるどころか、むしろ若者が政治に無関心なことを露呈することとなった。
これでは政治家達はますます若者を軽視してしまう……。
一体なぜ若者は政治に関心を抱かないのか。
そう落胆していた私だったのだが、ふとしたことでその考えが変わることになる。
きっかけは、ネットで一人の若者の書き込みを目にしたことだ。
「どうせ若者が投票しても何も変わらない」
彼の書き込みを見て、私はそれまでの自分の考えを一新することになった。
もしかしたら、私の考えは逆だったのかもしれない、そう思ったのだ。
今までは、若者が政治に関心を示さないから政治達は若者を蔑ろにしていると思っていた。
しかし、実際はその逆で、政治家達が若者を軽視しているからこそ、若者は政治に興味を示さなくなったのではないか、と。
そのことを裏付けるかのように、今回の選挙では19歳の投票率が低くなっている。
現在の19歳といえば、去年、選挙権が引き下げられた時の第一人者である。
その時の投票率(18歳時)は51.28%だったが、それが今回は32.34%と前回より18.94ポイントも下がっている。
単純に考えると、前回投票した内の4割ほどが今回の選挙に参加していないことになる。
はっきり言って、この下がり方は異常だ。
一説では、この現象には住民票が関係していると言われている。
当時、まだ高校生だった者が、大学生や社会人になって一人暮らしを始めた際に、住民票を移さなかったことが原因だというのだ。
たしかに、この仮説通りだとすれば、選挙のためだけにわざわざ帰省するとは考えにくいので、説得力がある考察だ。
しかし、私にはどうしてもそれだけが原因とは思えないのだ。
その理由は、都市部の19歳の投票率も下がっているからである。
本当に住民票のことだけが原因ならば、都市部周辺の投票率は影響がないはずだ。
それでも投票率が下がっているということは、やはり根本的な原因は他にあるのだ。
その原因こそが、前述した若者の書き込みに起因している、と私は考えている。
私の見解はこうだ。
若者達は、選挙に希望を見出せなくなったのだ。
まだ自分達に選挙権がなかった頃、彼等は自分達の投票で選挙の結果を変えられると信じていた。
しかし、いざ自分達が選挙に参加しても、結果は何も変わらなかった。
自分の投票は全く影響がない、そう悟ってしまったのだ。
そのことで「どうせ投票しても無駄」と、半ば諦めの気持ちを持ってしまったのだろう。
そう思ってしまうのも無理はない……。
今の選挙方式である小選挙区制では、若者の票の「価値」が反映されにくいのだから。
小選挙区制は多数決であり、いわば大多数に属した票以外は足切りされる。
要するに、どう若者が束になって投票しても、母数の多い高齢者が支持する候補者には勝てないのである。
それに加えて、政治家達が高齢者ばかりに目を向ければ、若者が選挙に意欲を持てなくなるのも当然と言えるだろう。
そうして政治への関心を失った若者達が、次々と選挙に行かなくなるのだと私は思っている。
若者の投票率を上げる3つの方法
では、どのようにしたら若者の投票率を上げられるのか。
私は、それには3つの方法があると考えている。
以下に、それらの具体的な方法を順番に述べていく。
1、小選挙区制の排除
前述したように、小選挙区制では若者の票は反映されにくい。
基本概念が多数決である以上、少数派の若者はどうしても不利になるからだ。
例えば、高齢者が支持するA候補者と、若者が支持するB候補者がいるとして、それぞれAに55票、Bに50票が入ったとする。
両者の差はわずか5票であるが、この方法ではAに投票しなかった人の票は全て無意味になってしまうのだ。
つまり、年代別に支持する候補者が違うとすれば、若者の票は最初から意味がないのと同義である。
これを改善するためには、選挙の方法を変えればいい。
世界を見れば、選挙のやり方は他にも色々とある。
その一つの例を挙げると、「繰り返し最下位消去ルール」というやり方だ。
これは2020年東京オリンピックを決めた際にも採用された方法で、最下位になった選択肢を消去し、そのうえでまた多数決を行うという方法だ。
この方法ならば、最後の二人を選ぶまでは必ず自分の票が反映されるので、少数派の票も無駄にはならない。
ただし、この方法は何度も選挙を行わなければならないため、相当な資金が必要になる。
よって、現在の日本ではあまり現実的ではないかもしれない。
2、インターネット投票の解禁
若者の投票率を上げるうえで、最も効果のある方法は「インターネット投票」の解禁だと思う。
なんだかんだ言っても、投票所に行くのが面倒だから行かない、という若者は多いのではないだろうか。
若者のスマホ普及率は8割以上であることから、インターネット投票が解禁されれば、若者の投票率はぐんと上がる可能性が高い。
単純に若者投票率を上げることだけを考えれば、これ以上の方法は他にないだろう。
ただ、インターネット投票に関しては反対する人が多いのが現状だ。
私個人としても、あまりインターネット投票の解禁には賛同できない。
やはり、インターネットを介して投票することには、どことない「軽さ」を感じてしまうのだ。
自分の足で投票所に出向き、自分の意思で候補者の名前を書く。
この行動があってこそ、選挙の重みを実感できるのだと私は思っている。
なにより、スマホから投票できるという気軽さから、イタズラ目的に投票する者や、第三者に悪用されることも懸念される。
インターネット投票は、まさにメリットとデメリットを合わせ持つ表裏一体の方法だ。
3、選挙権に年齢制限を設ける
最後になるが、私はこの方法こそが若者の投票率を上げ、尚且つ日本の社会構造を底上げすることに役立つと思っている。
その方法とは、選挙権に年齢制限を設けるのだ。
前述したように、どんなに若者の投票率が上がっても、少子高齢化の時代では、若者は母数の多い高齢者には勝てない。
ならばいっそ、選挙権を持つ年齢層自体を変えて、若者の影響力を大きくすればいい。
具体的に言えば、年金をもらう65歳になったと同時に選挙権も剥奪されるという仕組みだ。
私は、国から支援される立場になった者は、国の政策に口を出す権利はないと思っている。
もちろん、支援されることが悪いと言っているわけではない。
国から施しを受けることは国民として当然の権利であるし、社会保障は絶対に必要だ。
しかし、そのような恩恵を受けながら、国の政策に口を出すことは倫理的におかしいと思うのだ。
よって、年金をもらう立場になった者は、選挙権を放棄してもらいたい。
ただし、強制的に剥奪することは人道的に反すると思うので、これは条件付きで解除できるようにする。
その条件とは、年金をもらわないことだ。
今の時代、年金をもらわなくても困らないお金持ちの人や、65歳を過ぎても働きたいと思っている人は大勢いる。
そういった人達には、年金をもらうか、選挙権を得るか、そのどちらかを自分の意思で選べるようにしてあげればいい。
当然、意識の高い人は年金を受け取ることを拒否し、選挙権を得ることを選ぶだろう。
国の政策になど興味ない、と言った人は従来通り年金を受け取ればいい。
こうすることで、今問題になっている年金の支出も下げることができるし、若者の選挙への意欲も沸かせることができる。
まさに一石二鳥の方法だ。
投票することに意味がある
以上のように話してきたが、2017年現在、選挙方法を変えるという政策案は出ていない。
この状況の中で、若者達に「選挙に行け」と諭すのは難しいのかもしれない。
しかし、私はそれでも若者には選挙に行ってもらいたい。
たとえ自分の投票に意味を見出せなくても、投票すること自体に意味があるのだから。
もし今後、若者の投票率が上がり、それでも民意に反映されないのなら、世間はその時になって初めて現状の選挙方法が間違っていることに気づくだろう。
そうなれば、今回私が出した案のように、国からも積極的に選挙の改善策が出されるはずだ。
結果の反映に拘らず、若者は「投票する」という意思表示に焦点を当ててもらいたい。
どうか「自分には関係ない」などと、選挙に無関心にならないで欲しい。
今後の日本の将来を担うのは、誰でもない若者達なのだから。