コンビニのバイトがきつい本当の理由

近年、コンビニの人手不足が際立っている。

新しい店舗は年々増えているが、それに反比例するようにコンビニの就労人口は減り続けている。

私の地元のコンビニでも、アルバイト募集の張り紙が常に貼られている状況だ。

少し前まではアルバイトの定番とまで言われていたコンビニバイトだが、今ではその栄光は見る影もない。

一体何故このような事態が起こっているのだろうか。

私は、その最も大きな要因は、コンビニバイトのきつさだと思っている。

コンビニのバイトは楽、というのは昔の話で、今では大半の人が「コンビニのバイトはきつい」と認識している。

だが、それは単に仕事が激務ということではない。

コンビニバイトの本当のきつさは仕事内容以外にあるのだ。

今回は、過去にコンビニでアルバイトしていた私が、コンビニバイトの本当のきつさを語る。

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コンビニバイトの現状

私がコンビニでアルバイトをしていたのは、今から10年程前。

当時、世間の「コンビニバイトは楽」という言葉に乗せられて始めたバイトだったが、実際にやってみると想像以上にキツかったのを鮮明に覚えている。

その一つの要因としては、サービスの多角化である。

揚げ物、おでん、肉まん、たばこ、季節商品の販売、コピー機、チケット発券、宅急便、商品陳列、検品、清掃など、コンビニバイトの仕事は多岐にわたる。

それに加えて、近年ではドーナツやコーヒーなども販売され、ますますアルバイトの負担は増している。

ライバル会社が新しいサービスを始めれば、それに習うように他のチェーン店も同じサービスを始める。

現場の状況などお構いなしに、本部は次々と新しいサービスを打ち出してくるのだ。

それに振り回される従業員達は、常に過酷な就業を強いられている。

よって、今のコンビニバイトは難易度が物凄く高い。

商品の陳列とレジだけやっていれば良かった昔とは違い、今のコンビニバイトには複数のことを同時にこなすマルチタスク能力が求められる。

一言でいえば、何でもできるスーパーマンだ。

だが、そんな有能な人材がゴロゴロいるわけではない。

いたとしても、わざわざ1000円にも満たない時給でやろうとは思わないだろう。

もちろん、学生なら別かもしれないが、今の学生達は束縛を嫌う。

近年のコンビニは人手不足なだけに、学生でも希望通りに休みを取らせてくれないことが多々ある。

正月やお盆など、帰省時期でも強制的に出勤させられるケースも決して珍しくない。

これでは、学生達がコンビニバイトを敬遠するのも無理はないだろう。

こうした理由から、近年のコンビニバイトはなかなか人が集まらない状況なのだ。

コンビニのバイトがきつい本当の理由

多岐に渡る仕事内容、融通の効かないシフト、割に合わない時給。

細かいことを挙げれば他にもあるが、ざっと並べてもコンビニバイトのきつさがわかってもらえたと思う。

だが、コンビニバイトがきつい理由はこれだけではない。

本当にきついのは、お客から一流の接客を求められることだ。

前述したように、コンビニバイトは複数のことを同時にこなさなければならない。

商品の陳列やおでんの容器を洗いながらも、常にお客の動向をチェックする。

その合間を縫ってレジの接客をしているのだ。

よって、忙しい時はどうしても接客が雑になってしまう。

店員も人間であり、仏ではないのだからこればかりは仕方ないだろう。

しかし、客はそのようなことを考慮してはくれない。

大半の客は、一流デパート並の接客を求めてくる。

愛想の良さはもちろんのこと、手際の良さ、質問の受け答えなど、どれも一切の妥協を許さないといった風潮だ。

コンビニは身近な存在なだけに、特にそのことが目につくのかもしれない。

だが、冷静になって考えてみて欲しい。

たかがコンビニに、ここまで求めるのは異常ではないだろうか。

私は以前、海外旅行に行った時、現地のコンビニを利用したことがある。

そこの店員は偉く態度が悪かった。

厳密には態度が悪いというより「必要最低限のことしかしない」と言った方が正しいだろう。

商品をレジに通して会計する、これだけである。

会計を終えた後も「ありがとうございます」もなければ、入店して「いらっしゃいませ」もない。

最初に体験した時はひどく驚愕した。

一瞬、クレームをつけようかと思ったほどだ。

だが、現地ではこれが普通なのである。

あちらでは「仕事は契約に基づいたことしかする必要はない」という考えが主流になっている。

つまり、「愛想の良い接客」はコンビニの仕事には含まれていないのだ。

それを要求すればチップを払うことになるだろう。

最初は違和感を感じたが、よくよく考えれば、これは当然のこと。

本来、給料と仕事量は比例するものだ。

1000円にも満たない時給で、一流デパートと同じ接客を強要されるのは明らかにおかしい。

日本では「愛想の良い接客」が普通になっているが、世界基準で見れば、コンビニにここまでの接客を求める国は他にないのである。

この当たり前に一流の接客を求められるプレッシャーこそが、コンビニバイトがきつい本当の理由だ。

中には「接客業なら当たり前だ!」と思う人もいるかもしれない。

しかし、その感覚こそが、私達に根付いた諸悪の根源である。

よく考えて欲しい。

それを求めるということは、自分が接客する立場になった時も「同じこと」をしなければならないということだ。

『自分もしているんだからお前もしろ!』

そんな心境では、お互いがお互いを監視し合い、相手の些細なことでも目につくようになる。

これでは心に余裕がなくなり、ギスギスとした世界になってしまう。

「常に完璧な接客を求めて相互監視し合う世界」と「接客は適当でも皆がゆとりを持てる世界」なら、私は間違いなく後者を選ぶ。

大きな枠組みで言えば、私達がコンビニを利用する目的は商品を買うことである。

それさえできれば、そこに愛想があるかどうかは関係ないはずだ。

無意識に根付いた「愛想が良い接客が当たり前」という感覚、これこそがコンビニバイトの負担を増させている大きな要因である。

ただでさえ忙しいコンビニバイト、今後は多少の愛想の悪さには目をつむってあげて欲しい。

……と、綺麗に締めたいところだったが、実はその感情は私自身も経験している。

先日行ったコンビニで、店員の態度が偉く悪かったのだ。

そのことで思わずムッとしてしまった。

頭で自覚している私でさえこうなのだから、普通の人ならもっとそう感じるだろう。

心に染みついた「当たり前の感覚」は実に根が深い……。

「店員には思いやりをもって接する」

私も今後はそのことを忘れずに、店員にはゆとりある態度で接したいと思う。

コンビニの人手不足を解決するためには

私は、コンビニのバイトはもっと時給を上げるべきだと思う。

具体的に言えば、都内なら最低でも1200円はあっても良いと思っている。

どう考えても1000円以下の仕事内容ではない。

コンビニというのは他の業界に比べて客層が多様だ。

その影響で不測の事態が起こりやすい。

近年ニュースにもなった「中学生がふざけてアイスボックスに入り商品を駄目にした件」がそのいい例である。

そのようなトラブルが起こっても、対処するのは社員ではなく現場にいるアルバイト店員だ。

そんなリスクを伴う業務を、1000円以下でやらせるのは無理がある。

これでは人手不足は一向に解消されないだろう。

今後もコンビニ業界は、「新商品」や「新しいサービス」を次々と打ち出してくると予想される。

ならば、それに比例して時給もどんどん上げていくべきだ。

本来はそれに加えて、正月やお盆など、特別な期間に出勤する時は特別報酬も払うべきだが、いずれにしても本部の意識改善は必須だろう。

雇われオーナーでは権限に限度がある。

本部は渋るだろうが、それくらいのことをせずにバイトが集まらないと嘆くのは筋が通らない。

もし、時給を上げることがどうしても無理ならば、セルフレジを導入してはどうだろうか。

前述したように、コンビニバイトの本当のキツさは、客から「一流の接客」を求められるプレッシャーにある。

よって、レジさえセルフにしてしまえば、客とのトラブルも減り、店員は他の作業に集中できて、アルバイトの負担もぐっと下がるはずだ。

私自身も経験があるが、忙しい時に「うまい棒一本で1万円札を出された時」などは、ついイラッとしてしまった。

そういう時は無意識に接客も雑になってしまうものだ。

客側としても、そんなことで不快な思いはしたくないだろう。

そういった事を回避できるセルフレジの導入は、両者共にメリットのある有効な方法だと思う。

本部は新商品やサービスばかりに力を入れるのではなく、もっと現場の改善に力を入れてもらいたい。

そうすれば人手不足は自然と解消され、ひいては店の繁栄にも繋がるはずだ。

そのことに一早く着手するチェーン店は何処になるのか……。

今後のコンビニ業界の動向に注目したい。

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