嫉妬……。
それは人間の数ある感情の中でも、特に醜い感情だ。
この感情のせいで、時に人は、大切な友人や恋人を失うことになる。
私も、この感情には何度も振り回されてきた。
何度も何度も……。
それこそ自分が嫌いになるくらいに。
そうして繰り返すうちに、この感情の対処法について、私なりの一つの答えが出た。
今回は、そんな私と同じように自分が嫉妬深いことに悩む人たちに向け、この方法を伝えたい。
相手に嫉妬する理由
誰もが一度は経験したことがある嫉妬の感情。
それは例えば、相手が自分の欲しい物を持っていた時や、意中の彼女(彼)の気持ちが別の人に向いている時など。
そんな時、自分の心の中に、羨望と憎悪が混ざり合ったようなドス黒い感情が渦巻く。
羨ましい、憎い、許せない。
自分でも制御できない感情に振り回され、そうして最後には、虚しさだけが心に残る。
自分は自分、他人と比べても仕方がない。
そう頭の中ではわかってはいるのだが……どうしても心の奥にある「つっかかり」を消すことができない。
以前の私は、そんな自分に罪悪感を感じつつも、相手を妬む気持ちを一向に消すことができないでいた。
しかし、そんな私に不思議な出来事が起こる。
ある日、私の目の前に、私の欲しい物のおおよそ全てを持っている男が現れたのだ。
当然、私の性格からして、激しく嫉妬すると思っていた。
だが、不思議なことに、彼と接していても全く嫉妬の感情が沸き起こらないのだ。
自分でも信じられなかった。
何故、彼には嫉妬心が生まれないのだろう。
私は、その謎を解き明すために、自問自答しながら必死に考え抜いた。
そうして、あることに気がついた。
それは彼のことを最初から「格上」だとみなしていたことだ。
彼とは初めて会う前に、事前情報でどのような人物なのかを聞かされていた。
エリートの家系に生まれ、幼少より英才教育を施されており、難解資格を所有するお堅い職業。
このことを聞いていたせいか、彼に対する印象は自分とは別次元の人種という感じだった。
つまり、最初から自分との比較対象に入っていないのだ。
いい意味で眼中に無いということだろう。
この彼との出会いによって、私は始めて嫉妬のメカニズムに気づくことができた。
察しのいい方ならば、もうお気づきだろう。
そう、嫉妬とは「同等」あるいは「格下」の相手にしか沸かない感情なのだ。
思い返してみて欲しい。
あなたが今まで嫉妬を感じた相手が、どんな人物だったかを。
その相手に、あなたは必ず「同等」あるいは「格下」だと感じていたはずだ。
特に、今まで「格下」だと感じていた相手が、自分を追い越したと感じた時には、猛烈に反発心が沸き起こる。
これこそが嫉妬の根本的な正体。
嫉妬とは、「同等」「格下」の相手が、自分より上位に立つことを拒む心の抵抗なのだ。
恋愛の嫉妬
前項では、嫉妬のメカニズムについて述べた。
しかし、嫉妬とは相手を羨望する時だけに沸き起こる感情ではない。
それは恋愛に関する嫉妬だ。
一見すると、この二つの嫉妬は、全く別の感情のように思える。
しかし、やはりこれも根本的には、相手を「同等」「格下」だと思っているからこそ生じる感情である。
例えば、自分の好きな異性が、恋のライバルと仲良くしているのを見た時には、猛烈に嫉妬心を感じるはずだ。
すでに二人が恋人同士で、お互いの心が繋がっているという確証を持っているなら話は別だが、そうでないならば、普通は平常心でいられない。
だが、その意中の相手が、自分には絶対に手に入らない高嶺の華だとしたらどうだろうか。
恐らく、多くの人は「あんな素敵な人が自分なんかを相手にするわけがない」と思うのではないだろうか。
つまり、嫉妬をするということは相手を手に入れられる可能性(同等)があると思っているのだ。
また、すでに自分が相手と恋人の関係であったとしても、自分の所有物(格下)が他の者の手に渡るのではないか、という危機感が生じた時には嫉妬を感じる。
この二つに共通することは、どちらも自分の好きな人が手の届く存在であるということだ。
恋愛では、絶対に関わりを持てないと心から諦めている相手には、嫉妬心が起こることはまずありえない。
さらに厄介なことに、恋愛感情の嫉妬では、嫉妬の対象となる人物は自分の「意中の相手」だけには収まらない。
先ほどの例でいえば、自分の好きな人と「仲良くしている相手」にも沸き起こる場合がある。
これも前述したことと同じで、心の中では「あいつより自分の方がふさわしい」と思っているからこそ沸き起こる感情だ。
厳密にいえば、自分より下の者が好きな人と仲良くしているのが許せない、というのが正しいかもしれない。
もし、自分の恋のライバルが、自分ではとても敵わないと思う相手ならば、そのような感情は抱かないはずである。
とはいえ……人間の恋愛感情とは、そんなに簡単に割り切れるものではない。
自分の好きな相手が、自分以外の者に渡っても仕方がない、と思えるような恋のライバルにはそうそう出会えないものだ。
だからこそ、恋愛感情で相手に嫉妬することを否定しないでもらいたい。
恋愛感情で起こる嫉妬とは、まさしく人間の本能であり、私達人間にとっては切っても切り離せない感情なのだから。
嫉妬の対処方法
さて、ここまで嫉妬の理由、嫉妬の種類について話してきたが、多くの人が知りたいのは、その対処方法であろう。
まず最初に、結論から伝えておきたい。
嫉妬の対処方法とは自分との向き合いである。
つまり、多少なりとも自分を改善しようとする熱意が必要だ。
残念ながら、自分との向き合いなしに、すぐに対処できる方法は存在しない。
そのことをまずはしっかりと認識してもらいたい。
では、詳しく説明していく。
私が最初に嫉妬の対処法で試したことは、相手との比較をやめるということ。
嫉妬の感情が芽生えた時、自分は自分、他人は他人と心の中で強く念じるという方法だ。
この方法は、巷でもよく聞く方法なので、すでに多くの人が実践していると思われる。
だが、残念ながら私には効果がなかった……。
厳密にいえば、この方法では自分の気持ちに嘘をついていることになり、余計に気持ちが抑圧されるのだ。
抑圧された感情は自責の念となり、ますます自分を追い込むこととなった。
結局、この方法では何の解決にもならなかったのである。
そこで、ある時から発想の転換を試みることにした。
それは、嫉妬の感情を受け止めるということ。
今までの私は、この嫉妬の感情をどうにか消そうと頑張っていたのだが、それを完全にやめることにしたのだ。
そうすると不思議なことに、あれだけ苛まされてきた妬みの気持ちが、次第に薄らいでいくのを実感できた。
私はこの時、これこそが嫉妬の感情に対する正しい向き合い方なのだと実感することになった。
「受け止める」ということに関して、よくわからないという方もいると思うので、もう少し詳しく説明する。
そもそも、何故相手に嫉妬の感情が生まれるのかといえば、それは今の自分に満足していないからだ。
今の自分に満足していれば、相手と自分を比較しようとは思わないはずである。
相手を妬ましいと思う気持ち、それはつまり、今の自分が許せないからだ。
そこで、今の自分を完全に許すということが、嫉妬の感情と向き合うための第一歩となる。
嫉妬の感情が芽生えた時、「相手が妬ましい、許せない」と思うのではなく、「相手が羨ましいと思ってもいい、妬んでもいい」と考えるのである。
こうすることで、仮に相手を妬むことになっても、決して自己嫌悪に陥ることはない。
そして、もう一つ。
嫉妬に対する究極の解決方法は相手より自分の方が上だと認めることである。
最初に述べたように、嫉妬をする対象は「同格」あるいは「格下」の相手だけだ。
どんなに表面上は相手を賞賛しても、心の中では「自分の方が凄い」と思っているから嫉妬する。
ならば、その気持ちを肯定することで、自分の本当の気持ち=「嫉妬の感情を受け止める」ことになるのである。
もちろん、このことを直接相手に言う必要はない。
ただし、「自分だけ」は自分自身を認めてあげること。
本当は自分の方が凄い人間なのだ、と自分自身に言い聞かせることだ。
これを行うためには、なにより自分に自信を持つことが必要となる。
それは【自分に自信がない人が確実に「自信」をつける方法】でも話したように、簡単なことではない。
たとえ今の自分が相手より劣っていると感じても、ありのままの自分を認め、今の自分には価値があると言い聞かせる必要があるからだ。
かくいう私自身も、未だにこのことをマスターできていない。
気を抜けば、すぐに嫉妬の感情に飲み込まれてしまう。
しかし、この認識が自然とできるようになれば、あなたは今後、二度と嫉妬で悩むことはないはずだ。
もし、それでも自分自身を信じられない、と思う人がいるのなら、最後にこのことを伝えたい。
嫉妬を感じるということは、あなたにはまだまだ秘められた可能性があるということだ。
本当に相手より劣っているのなら、最初から嫉妬など感じない。
あなたの本能が、本当の自分はこんなものじゃない、とあなたに伝えようとしているのだ。
そのことを信じて、いつの日か、意識しなくても自分で自分を認められる人間になってもらいたい。
あなたが嫉妬をする側の人間から、嫉妬をされる側の人間になれることを、私は願っている。