2017年5月2日に放送された『この差って何ですか?』では、生まれた順の差を特集していた。
内容を端的に言えば、長子、末っ子、中間子、一人っ子を比べて、職業ごとにそれぞれの割合を公表するといった感じだ。
私は、この番組を見て心底落胆した。
何故なら、「一人っ子」に対する偏見を助長しているように感じたからだ。
恐らく、私と同じ一人っ子の者は同じ感想を抱いたはずである。
人によっては、この番組を見た後で、一人っ子は兄弟がいる者より劣っていると錯覚を起こしたかもしれない。
それほどまでに、番組内での一人っ子への扱いは酷いものだった。
だが、私はその認識は間違っていると声を大にして言いたい。
今回は、そんな一人っ子の偏見を払拭するために、この番組の内容を真っ向から否定する。
世間から見た一人っ子の印象
冒頭でも述べたように、私は一人っ子である。
一人っ子と聞いて、大半の人が真っ先に思い浮かべるのは「ワガママ」ということではないだろうか。
私は、この一人っ子というレッテルにより、幼少の頃から差別を受けてきた。
酷い場合は、私が一人っ子と知った時点で「甘やかされて育てられたんだ」と面と向かって言われたこともある。
もちろん、私がワガママであることは否定しない。
自分でも、たしかにそのような部分はあるかもしれない、と思っている。
しかし、私個人を見てワガママと判断されるのは構わないが、「一人っ子」という枠組みでワガママだと決めつけられるは、どうしても納得がいかなかった。
今回の番組内でも、一人っ子への扱いは厳しかった。
司会者の加藤浩二は「一人っ子はワガママで自分のことしか考えてない」と堂々と公言していた。
それを聞いた周りのゲストも、声には出さなかったが「その通り」といった顔つきだ。
恐らく、世間の大半は一人っ子をこのように認識しているのだろう。
一人っ子の代表としてゲストに出演していた二人は、とても肩身を狭そうにしていた。
私がこの番組内で、特に一人っ子に対する偏見を助長していると感じたのが、データの算出方法である。
東大は長子が多い、スポーツ選手は末っ子が多い、一流企業の社長は中間子が多い、など、職業ごとに棒グラフで割合を出していたが、どの分野でも一人っ子は最下位だった。
唯一、音楽家の分野だけが一位だったが、基本的には一人っ子は口を挟むことは許されない、といった雰囲気だ。
それぞれの理由も、心理カウンセラーの意見を交えて、説得力があるように印象付けていた。
しかし、私はこのことに異を唱えたい。
そもそも最初から比較する母体数に差があるのだ。
以前、資料で見たのだが、20代の一人っ子の数は全体の1割ほどしかいないのだ。
現在は、年々一人っ子の数は増えてきてはいるが、それでもせいぜい15%ほどだろう。
大半の人には兄弟がいるのだ。
よって、単純に考えれば、どの分野でも長子か末っ子が多くなるのは当たり前である。
仮に、今回の番組内でのデータの算出方法を「一人っ子100人に対して東大生は何人か」という算出方法ならばまだ納得がいく。
しかし「東大生100人に対して一人っ子は何人か」という算出方法では、最初からハンデを背負っていることになる。
これでは、単に「一人っ子=無能」という印象を植えつけかねない。
この方法は、全くもって公平性に欠けるやり方である。
テレビには多少の演出はつきものではあるが、今回のやり方はあまりにも一人っ子の偏見を助長するように感じた。
どうか、番組を見た人はくれぐれも鵜呑みにしないでもらいたい。
子供の世界に与える影響
どんなに一人っ子の偏見を取り払うために説明しても、恐らく、世間の大半の人は関心を示さないだろう。
多くの人は、事実よりも自分が納得がいく答えを好むものだ。
この記事を読んでいる中にも、もしかしたら「こんなことで熱く語るな」と思っている人がいるかもしれない。
しかし、勘違いしないでもらいたい。
私がここまで力説しているのも、決して自分の保身のためではない。
すでに30代に突入した身としては、自分が一人っ子であることなど今更どうでもいいことだ。
しかし、子供は違う。
まだ視野が狭い子供達は、テレビの情報をダイレクトに受けてしまう。
子供の世界は残酷だ。
少しでも叩ける要素があれば、問答無用で差別を行う。
最悪の場合は、そのことでいじめにまで発展してしまうこともあるのだ。
幼少の頃、私も一人っ子ということで酷く差別を受けてきた。
その悲しみを知っているからこそ、今の子供達には私と同じ気持ちを味わってほしくない。
だからこそ、このような偏見を助長する危険がある内容を、全国テレビでは放送して欲しくないのだ。
たしかに、兄弟がいる・いないで、差がでる要因もあるのかもしれない。
しかし、兄弟がいる・いないは本人では選べないのだ。
にも関わらず、そのことで優劣をつけるのは、差別と同じではないか。
さらにつけ加えれば、世間の一人っ子は恵まれているという印象も大きな間違いである。
昨今では、家庭の経済面から一人しか子供を作れず、仕方なく一人っ子にせざるをえない状況が増えている。
もっと酷いのは、家庭内に問題がある場合だ
実際、私が一人っ子の理由も、父親が子供を嫌いだからである。
【毒親の呪縛から逃れる方法】でも話したように、私の父親は毒親である。
子供嫌いの父親のことだ、本来ならば子供など作りたくはなかったのだろう。
しかし、昔は結婚して子供を作らなければ一人前と認められない風潮だった。
そのため、仕方なく子供を作ったと思われる。
そんな親元に生まれた私は「一人っ子は親からの愛情を一人占めできる」という言葉を聞くたびに、やるせない気持ちになっていた。
一人っ子だろうと、私は父親から愛情を受けていないのだから。
このように、人にはそれぞれの事情がある。
そのような事情を考慮せず、全ての一人っ子が「恵まれている」と決めつけるのはあまりにも酷である。
大事なのは、その人を「一人っ子」という枠組みで見ずに、もっと個人の「内面」に目を向けるべきだ。
いつの日か、多くの人が一人っ子に偏見を持たずに客観視できるようになることを、私は願っている。
一人っ子にも偉大な人物はいる
最後に、一人っ子で偉大な人物の例を挙げて、この記事を締めくくることにする。
その人物は、日本人なら誰もが知ってるであろう北島康介だ。
スポーツの世界では末っ子が多い、という番組内のデータを彼は見事に打ち破っている。
しかも、世界でたった一人しかなれないオリンピックの金メダリストだ。
このことからわかるように、一人っ子だろうと本人次第で輝ける可能性はあるのだ。
もし、あなたが一人っ子であるのなら、一人っ子であることを気に留めずに、向上心を持ってもらいたい。
そして、成功した暁には、堂々と自分が一人っ子であることを公言してほしい。
もしかしたら、あなたが一人っ子の偏見を覆す第一人者になるかもしれない。