日本の子育て環境が息苦しい理由

今、世間で「日本の子育て環境」が物議を醸している。

きっかけは、サッカー日本代表「長友佑都」の発言だ。

長友はインタビューで記者から子育てのことを聞かれると「海外と比べて日本は愛が足りない」と一喝。

この発言が多くの人の反感を買い、炎上騒ぎとなった。

少し前にも、妻の「平愛梨」がブログでレストランに子連れで入れなかったことに不平を漏らし、日本の子育て環境を批判していたことが話題になった。

長年の海外暮らしをしている二人には、日本の子育て環境は息苦しいと感じるようだ。

ただ、一般的にも、海外に比べて日本は子育てがしにくい、と言われているのは事実である。

しかし、その原因は本当に日本人のせいなのだろうか。

そこで今回は、日本の育児環境を考察しつつ、日本の子育て環境が息苦しい理由について語りたい。

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現代人は心に余裕がない

まず、海外と日本を比べた時に、最初に思い浮かぶ大きな違いは日本が高齢化社会だということだ。

他の先進国でも高齢化社会の傾向があるとはいえ、その中でも日本は群を抜いている。

ただ、懸念すべきことはそこではない。

子供の出生数である。

日本では出生数がすでに100万人を切っており、2018年はなんと91万8397人と過去最低となった。

このままだと80万人になるのも時間の問題だ。

これの意味するところは、子供は誰もが持てる環境ではなくなったということ。

その昔、日本にも子供が多い時代があった。

子供を持つことが当たり前とされ、大半の者が家庭を築けた時代だ。

この頃は長友の言うような「子供に温かい国」だった。

誰もが子供を持てるだけに、皆が子供を持つ親の気持ちが理解できる。

子供に多少迷惑を掛けられても、「自分の子供もこんなだったなぁ」と寛容の気持ちになれる。

しかし、前述したように、今の時代は親になれる人が少なくなっている。

言い方は悪いが、もはや子供は贅沢品の分類なのだ。

そうなった大きな理由は、日本経済の衰退である。

ここ数十年の間、日本は景気の衰退や非正規の増加で労働者の年収が昔と比べて格段に下がった。

平成27年分の「民間給与実態統計調査」によると、民間企業の平均年収は420万とされている。

この平均の分母の中には、当然高収入の人達もいる。

そういった引き上げる人間がいても尚、この数値なのだ。

恐らく、中央値を出せば300万円台になると予想される。

これではとても子供を作る気など起きないだろう。

さらに、そこに拍車を掛けるように、金融庁が老後2000万円が必要だと公言した。

日々の生活に困窮するだけでなく、老後の心配までしなくてはならず、現役世代は常に不安に苛まれているのだ。

要するに、今の日本人には心に余裕がないのである。

自分の生活だけで手一杯で、子供に寛容になれる余力がないのだ。

こういった社会では、当然、企業は子持ち世帯よりも多数派である独身者高齢者向けのサービスを重視する。

長友夫婦が不平を漏らした「子連れの入店を拒否する店」もその流れの一片だろう。

現代社会では、子供のはしゃぎっぷりを不快に感じる人が多いのだ。

これも少子化の弊害の一つである。

日本でイクメンが増えない理由

次に挙げられるのが、日本の労働環境だ。

日本では昔から労働時間の多さが問題視されてきた。

最近は大分改善されてきたとはいえ、それでも海外に比べれば日本の労働環境は時代遅れの部分が多い。

特に、男性の育児についての理解度はかなり低い。

少し前に起こった「カネカのパタハラ問題」をご存じだろうか。

これはカネカの元男性社員が育児休暇を取ったことで、会社から不当な転勤を命令され、やむなく退職したという事例だ。

発覚した経緯は、男性社員の妻がtwitter上でこの件を投稿したことが始まりだ。

妻のツイートによると、この男性社員には2歳0歳の子供がおり、新居を建てたばかりとのこと。

こうした理由もあり、男性社員は会社に転勤の時期を待ってもらうように掛け合ったが、会社側はこれを認めなかったようだ。

このことがネット上で瞬く間に広まり、一時はカネカの株価が下がる事態にまで発展した。

実はカネカは元々育休制度がホームページにも記載されており、男性の育児休暇を推進している企業だった。

2016年には3人の男性社員が育休制度を取得した実績を持っている。

しかし、今回の一件が公になると、ホームページからこのページが削除されたのだ。

ここから推測できることは、表向きは男性の育児休暇を促進していたが、実態は心良く思っていなかったのではないか、という懸念である。

カネカのような名の知れた大手企業でさえこのようなことが起きるのだから、日本の9割を占める中小企業で男性の育児休暇が認められるわけがない。

日本では、まだまだ男性の育児に否定的な会社が多いのだ。

現実問題、男性が育児に参加できるのは、長友のようなスポーツ選手や個人業など、特殊な職業でなければ難しいだろう。

「イクメン」という言葉が話題になるのは、それだけそういった男性が希少価値だからだ。

よほどのホワイト企業でない限り、一般的なサラリーマンは朝から晩まで長時間労働を強いられ、帰宅してから育児をする体力は残っていない。

もちろん、これは女性にも言えることだが、女性の場合は「育児のため」と言えば休暇や定時帰宅が許される風潮がある。

実際、私が今まで働いてきた会社でも女性社員が言う分には上司は「仕方ない」といった感じで許していた。

しかし、男性が「育児のために早く帰らせてほしい」などと言えば、上司の顔はたちまち険しくなり、周りからは冷たい視線を浴びせられることになる。

こうした事情から、育児に参加したくても物理的に無理な男性も多いのだ。

つまり、イクメンを増やしたいのなら、まずは日本の労働環境を見直すことが先決である。

それを改善せずに、「日本男性は育児に協力的ではない」と批判するのは少々酷というものだ。

海外と日本が同じ労働環境になって初めて平等な比較ができる。

ただ、労働改善が遅い日本で、それが実現するのはいつになるだろうか……。

まだまだ遠い未来になりそうだ……。

子供を過敏に警戒する社会風潮

最後になるが、子供に対して愛が足りない、と感じるのは今の日本の社会風潮がそうさせているからだ。

現代の日本は、昔と比べて犯罪に過敏になっている。

公園で娘と遊ぶ父親が、警察に職務質問される事例は後を絶たない。

自分の子供でもそうなのだから、もし見知らぬ子供に声を掛けるようなことがあれば、それだけで不審者扱いされかねない。

最近では、迷子になって泣いている子供を見つけても「あえて声を掛けずにスルーする」ことを推奨している人達もいる。

これは冗談で言ってるのではなく、自分の身を守るために本気で忠告しているのだ。

下手に声を掛けてしまうと、周りに通報されて冤罪に合うかもしれないからだ。

なんとも悲しい世界だが……これが現実である。

もちろん、そうなってしまったのはこの国がそれだけ物騒になったからである。

悲劇が起きてからでは遅いのだから、事前に対処しようとする心構えは大切だろう。

しかし、私は最近の犯罪に対する過敏さは異常だと思うのだ。

多くの人間は子供に害を及ぼさない善人のはず。

最初から犯罪者のように疑う風潮では、子供に対して優しくしようなどと思えるはずがない。

本来、子供にはもっと気さくに接するべきなのだ。

昔の日本は、大人と子供のコミュニケーションが盛んでとても活気づいていた。

それが現代では、子供をまるで腫れ物に触るように接している人が多い。

仕方のないことかもしれないが、できるならば、昔のように人情味に溢れた社会に戻ってもらいたいと願う……。

日本の子育て環境を改善するために

以上が日本の子育て環境が息苦しい理由である。

こうして見ると、長友の「日本は愛が足りない」という言葉は、ある意味では正しいかもしれない。

昔に比べれば、明らかに日本は子育てがしにくい環境になったと言えるだろう。

しかし、長友が批判される理由は、その原因を日本人の気質と捉えていることだ。

前述したように、そうなっているのは今の日本の社会環境が起因している。

決して日本人だから愛が足りない、というわけではない。

であるならば、「子育てがしにくい今の日本社会はおかしい」と国の仕組みを批判するべきである。

これならば、多くの人が賛同したはずだ。

日本で子育てがしにくい理由を「個人」のせいと捉えるか、「社会」の問題と捉えるか、この認識を変えるだけでも改善点は大きく違ってくる。

長友のような影響力のある人間には、是非ともこの問題を正しく認識してもらいたい。

日本と海外ではどのように社会環境が違うのか。

そこに着目すれば、必ず日本社会を改善するヒントが隠されているはずだ。

長友に限らず、海外で長年生活をしている者には、是非ともそうしたノウハウを日本に持ち帰って多くの者に広めて欲しい。

そうして社会の仕組みが変われば、必ず個人の思想や行動も変わるはずだ。

私はそう信じている。

いつの日か、日本も子育てがしやすい国」と言われる日がくることを願っている。

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