2017年8月26日に放送された『ジョブチューン』では「野球VSサッカー」という題材で、どちらが国民的スポーツ№1にふさわしいかを決めるものだった。
結果は、言うまでもなく野球の勝利となった。
歴史の長さを考えれば当然のことであり、これ自体は別段驚くことではない。
しかし、私が注目したのは、野球とサッカーの子供の競技人口だ。
番組内で、「子供に人気なのは野球とサッカーどっちか」を競うコーナーがあった。
そこで実際に高校生までの競技人口のデータが出されたのだが、それによると野球は「66万6844人」、サッカーは「72万8539人」だった。
つまり、子供の人気ではサッカーの方が上なのである。
最初は、これは近年のサッカーブームによる影響なのかと思っていたが、番組内でゲストが討論するのを見て、その考えは変わった。
ずばり、これは日本の悪しき風習が関係している。
理不尽な部活ルールがもたらす子供への影響
子供の野球人気が下がっていることは、野球界でも深刻な問題として捉えられているようだ。
実際、野球側のゲスト達も「この話を持ち出されるとイタイ」と語っていた。
だが、それと同時に「野球に比べてサッカーは上下関係が緩い」とも非難していた。
元プロ野球選手『デーブ大久保』にいたっては「野球なら先輩を呼び捨てにしたら永久追放される(サッカーは緩い)」と憤慨するほどだ。
たしかに、サッカー選手は試合中に「あだ名」や「下の名前」で呼ぶことが多く、時には年上の選手にも「○○くん」などと呼んでいる。
これに対して野球は、どんな時でも先輩には敬語を使わなければならない。
これだけ見れば、人によってはサッカーより野球の方が礼儀を重んじている、と思うだろう。
しかし、私はこれこそが今の子供達が野球より「サッカー」を選ぶ要因ではないかと考えている。
学生の時に体育会系の部活をやっていた者ならわかると思うが、部活内は理不尽なことで覆い尽くされている。
特に一年生に対しては、まるで「奴隷」のような扱いだ。
実際、私自身もそのような経験がある。
中学時代、私は野球部に所属していた。
私が所属していた野球部では「一年生は通学路を歩いてはいけない」という掟があり、毎日わざわざ遠回りして帰らなければならなかった。
当時は何も思わなかったが、冷静になって振り返ると、「これに一体何の意味があるのか」と思ってしまう。
ただ単に、先輩としての権力を見せつけているだけではないか。
大人になった今なら、絶対に従わないだろう。
このような掟は、どこの学校にも多かれ少なかれ存在する。
中には、一年生のうちは「食堂を使ってはいけない」「自動販売機を使ってはいけない」などの掟を採用している学校もある。
このように、野球部には野球とは関係ない理不尽なルールが多い気がするのだ。
「坊主頭」を強制させられることは、その代表と言ってもいいだろう。
世間ではこれを伝統と呼ぶこともあるが、私にしてみれば時代遅れの産物でしかない。
そんなことでは、子供達の心はますます離れていってしまう。
今の子供達は賢い。
ネットの普及もあり、自分が納得できないことにはちゃんと疑問視する力を持っている。
昔の子供のように、大人に言われたことをただ黙って従うような真似は絶対にしない。
人によっては生意気だと思うかもしれないが、私はいい傾向だと思っている。
なぜなら、物事を疑問視する力を養うことは、世の中の間違いを正していくことに繋がるからだ。
スポーツの世界に限ったことではないが、日本社会は年上には絶対服従という暗黙の了解がある。
たとえ上の者のやり方が間違っていたとしても、下の者は決して意見を言うことを許されない。
このことが、どれだけ社会の歪みを作り出しているだろうか。
非効率な仕事のやり方、無駄に長い会議、長時間残業。
元をただせば、これらは全て日本の縦割り社会が原因だろう。
そして、その基盤を作り出しているのは紛れもなく部活動だ。
学生時代から上下関係という名の理不尽を体に染み込ませ、自分で考える力を奪っている。
全ては上の者の言われるがままだ。
だが、そんなやり方を続けていれば、今後、日本はますます世界から取り残されることになるだろう。
時代と共に、人の「ニーズ」や「考え方」は確実に変わっているのだから。
いつまでも過去の栄光にとらわれ、昔のやり方を貫こうとするのは時代遅れとしか言いようがない。
私は、常々疑問に思っていることがある。
日本ではさんざん「これからはグローバル社会だ」と唱えているにも関わらず、なぜ人間関係だけは一向に世界基準にならないのかと。
【年齢にとらわれないことの大切さ】で話したように、世界では相手の年齢など些細な問題だ。
相手が年上だろうと間違っていれば意見を言うし、友達のようにフランクに接することもある。
そのような横の関係を築くことが、社会をよりよく改善することに繋がっていくのだ。
日本のような縦割り社会では、いつまで経っても問題点は改善しないし、息苦しいだけである。
子供にサッカーが人気な理由
サッカーは日本でグローバル化が進んでいる数少ないスポーツと言っていいだろう。
サッカーには、幼少の頃から「ユース」というプロの下部組織がある。
それは部活とは違い、純粋にサッカーの実力を高めることだけに専念でき、基本的に先輩後輩の概念もない。
前述した「○○くん」という呼び方も、このことが由来しているのだろう。
サッカーが子供に人気な理由は、このように「束縛のない自由さ」が今の子供達のニーズに合っているからだと思われる。
昔と違い、「努力」や「根性」という熱いフレーズでは、今の子供達はついてこないのだ。
だからこそ、熱血指導が多い野球は子供達から敬遠されるのだと思われる。
日本の会社と同じで、いつまでも伝統に縛られているようでは、今後、昔のような野球人気が戻ることは二度とないだろう。
野球界は早くそのことに気づくべきである。
日本には、「イチロー」や「大谷翔平」など、世界から注目される選手が数多く存在する。
選手の質でいえば、間違いなく世界屈指だ。
そのような功績を決して無駄にしてはいけない。
今こそ、日本野球の在り方を変える時なのだ。
時代の流れを汲み取れば、きっと子供の野球人気も戻るはずだから。
最後に、番組内でサッカー解説者でおなじみの『松木安太郎』が良いことを言っていたので紹介する。
「同じ仕事場で同じ目標のために戦ってる選手だから、それ(呼び捨て)は構わない」
この言葉のように、大事なのは年齢や伝統にとらわれることではなく、目標を達成することである。
一人でも多くの人が、そのことに気づくことを私は願ってやまない。