「残業100時間規制」で労働環境は改善されるのか

政府が残業時間の上限を100時間未満に規制することを決定した。

当初は経団連が上限を「100時間」と主張したことで、「100時間未満」を要請する連合側と対立し、議論は難航した。

最終的には、経団連側が連合側の意見を呑む形で議論は終結となった。

一部では、今回の政府の対応に賛美を送る声があるが、私はどうしても腑に落ちない。

いや、この際だからハッキリと言おう。

この規制に一体何の意味があるのか、と。

今回の法案に、私は心底落胆した。

ようやく政府が労働環境の改善に着手したと喜んでいたのに、蓋を開けたら「100時間」か「100時間未満」かで話し合っている。

ニュースで最初に見た時は、「そこじゃないだろ」と思わず口ずさんでしまった。

恐らく、多くの人が私と同じようなことを思ったのではないだろうか。

労働者の立場からすれば、「100時間」も「100時間未満」も全く大差がない。

そもそも、この「100時間」という数字は何処からきたのだろうか。

改めて見ても、とんでもない数字だ……。

仮に自分が残業を100時間するとしたら、一体どのような生活を送ることになるのか。

試しに、そのことを具体的に考えてみた。

まず、定時が9時~18時の8時間労働とする。

それを週5日のフルタイムで計算すると、残業100時間をこなすためには、一日に約5時間残業しなければならない。

つまり、仕事が終わる時間は23時となる。

朝の9時から始まり、夜の23時に終わる、この生活を月に20日間こなす。

ありえない……。

私には到底無理だ……。

やはり、今回の法案に出された「100時間」という数字は異質としか言いようがない。

さらに、この法案にはもっと恐ろしい闇の部分が隠されている。

それは、この法案が可決されたことにより、残業100時間(未満)が合法になってしまったことだ。

世の中には、先ほど私が例に挙げたような生活を送る人が数多く存在する。

いわゆる労働基準法を守らない企業で働く人達のことだ。

残念ながら、そのような企業は、私達が想像している以上に多い。

げんに、私が過去に勤めた会社もそうだった。

ただ、これまでは、そのような企業をブラック企業と認定して咎めることができた。

しかし、今回の法案が可決してしまった後では、違法性がないことになり、ブラック企業の経営者に罪悪感を植えつけられなくなってしまう。

政府は、残業100時間は繁忙期などの特例に限る、としているが、ブラック企業がそんなことを守るはずがない。

今後は、ブラック企業の経営者は「残業100時間は合法」という部分だけを強調して、社員に残業を強いるだろう。

なんておぞましい……。

想像しただけで、胃がキリキリと痛んでくる……。

そもそも、なぜ残業ありきで議論を進めているのか、私にはそれが理解できない。

本来なら、どうやって残業をなくすか、そこに焦点を当てるべきではないのか。

日本の労働は、海外に比べて本当に生産性が低い。

いつまでも昔のやり方にこだわり、朝礼や長時間の会議、社内独自のルールなど、仕事内容とは関係ないことばかりに気を取られ、肝心の業務を疎かにしがちだ。

そのような無駄を省き、効率性を追求するだけでも、確実に残業は減らせるはずである。

仮に、そこまでしても本当に残業がなくならないのなら、それは一人の仕事量が適確ではない証拠だ。

仕事量が一人分の許容量を超えているから、残業しなければ終わらないのである。

そうであるならば、単純に人員を増やせばいい。

そうすれば、一人に対する仕事量は分散され、残業をしなくても時間内で終わるはずである。

だが、たとえそうだとわかっていても、経営者はそれを拒むだろう。

なぜなら、人を増やせば人件費が掛かるからだ。

私は、経営者達が「残業100時間」に拘っている理由はここにあると思っている。

残業を規制されれば、強制的に人員(人件費)を増やすことになるからだ。

日本の企業は、人件費を節約することに本当に固執している。

いかにして人件費を掛けずに仕事を回すか、そのことばかりを重視しがちだ。

その反面、新しいサービスは次々と生まれ、仕事量だけが一方的に増えていく。

結果として、一人に対する負荷が高くなっているのが現状だ。

こう考えれば、今回の残業規制では、根本的な労働環境の改善には繋がらないことがわかる。

残念ながら、政府はそのことを理解していないようだが……。

結局のところ、今回の法案は経営者視点でしか考えられていないのだ。

日本の法律は、労働者の意見が一向に反映される様子がない。

もはや、ブラック企業から身を守るためには、自分で行動を起こすしかないのかもしれない……。

【辛いことから逃げるのは悪いことではない、それは強さだ】でも話したように、辛い状況を耐え続けることは、決して美徳ではない。

それどころか、最悪の場合、それは自分の精神を追い詰めることになる。

そうなる前に、少しでも職場にブラックのニオイを感じたら、すぐに逃げ出すことを心に留めてほしい。

下手な責任感は、自分の身を滅ぼすことに繋がりかねない。

某広告会社の女性新入社員が自らこの世を去った件のように、自分の限界を超えてからでは遅いのだから……。

本当ならば、そんな心配をする必要がないほどに、世の中の大多数がクリーンな企業で占められているべきなのだが……。

それを実現するためには、私達が日頃から、ブラック企業に対して厳しい目を向けている必要がある。

ブラック企業に屈せず、一人一人が労働者としての権利を主張し、真っ当な労働環境を得るために、皆で力を合わせるべきだ。

そうすれば、きっといつの日か、ブラック企業は完全にこの世から抹消されるはずである。

その日がくることを、私は心から願っている。

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