働くこと、それは収入を得るために架せられた使命。
食べていくために働かなければならない。
そこには、自分の意思など挟む余地はない。
当時、サラリーマンになったばかりの私は、そう考えていた。
だが、時間が経つにつれ
働きたくない、辛い、辞めたい。
そのことばかりが頭を占めていた。
職場を十数回と変え、気持ちが変わるのを期待したが、結局のところ変わることはなかった。
初めこそ働く意欲が沸くものの、どうしてもその気持ちが保てない。
どうして自分はこうなんだ……いつも自分を責めては悩んでいた。
それとは逆に、どこの職場でも意欲的に働く人達がいる。
彼等はどうしてこんなにも意欲的に働けれるのだろう……。
私は、その謎を解消するために、彼等を観察し続けた。
すると、彼等にはある共通点があることに気がついた。
意欲的な人の三つのパターン
私が出した結論では、働く意欲を持つ人間には三つのパターンに分けられる。
三つのうち、二つが複合することはあれど、三つのパターンのいずれにも該当しない意欲的な人間は一人もいなかった。
もちろん、本人はこのことを自覚していないかもしれないが、客観的に見れば、必ずどれかに当てはまっている。
それでは、一つ一つ紹介していこう
①仕事が好きな人間
これは当たり前かもしれないが、仕事が好きな人間は意欲的に働いていた。
私のような人間には到底理解できないことだが、仕事が好きで好きで仕方がない人間は、どこの会社にも必ず存在した。
彼等は好きでその仕事をしているため、仕事をすること自体に苦痛を感じることはない。
もちろん、時には仕事で行き詰まることもあるだろうが、それ自体も楽しんで行っているように見える。
また、仕事ができるタイプも、この人種に当てはまることが多かった。
周りから見れば、仕事ができて凄いと思うのだが、本人からすれば、ただ楽しいからやっているだけなのだ。
彼等は仕事をしている時、本当に輝いて見える。
比喩ではなく、本当に目がキラキラしているのだ。
仕事に熱中することで、自己実現を果たそうとしているのだろう。
自分の目標とその仕事が一致していれば、これほど幸せなことはない。
だからこそ、彼等は何のよどみもなく、ただひたすらに楽しみながら仕事を行えるのだ。
そんな彼等を見ては、私は心底羨ましいと思っていた。
②守るべきものがある人間
守るべきものを持っている人間も意欲的だった。
ここでいう守るべきものとは、主に家族のことを差す。
厳密に言えば、家族を養っている人物のことだ。
彼等もまた、仕事は非常に熱心だった。
自分が家族を養う義務感、家族を守っている自尊心、家族の命を預かる責任感。
そんな気持ちを、彼等からはヒシヒシと感じた。
ただ、①の仕事が好きな人間と最も違う部分は、彼等は別に仕事自体は楽しんでいるわけではないことだ。
どんなに辛い仕事でも、どんなに理不尽な怒られ方をしても、歯を食いしばってでもやり遂げる。
彼等からは、そんな鬼気迫る気迫を感じる。
守るべきものが自分の糧になる。
どこかでこんな言葉を聞いたことがあるが、もしかしたら、それは本当なのかもしれない……。
③強迫観念で働く人間
最後のパターンが最も多く見受けられ、私のような人間にとっては最も厄介なパターンだ。
それは、仕事ができる人間こそ生きる価値があるという信念を持った者だ。
信念といえば聞こえはいいが……もはやこういったタイプの考えは強迫観念に近い。
自分自身でも、仕事を辞めたい、辛い、苦しい、そう考えていても、仕事をしていない自分に価値はない、とひたらすら頭に強迫観念を植えつける。
自分自身をひたすらに追い込むことで安心する、心と体が矛盾した思考の持ち主だ。
妥協や弱音は決して許さない。
その姿は端から見ると、まさに馬車馬のようだった……。
さらに厄介なのは、このタイプは他人にもそのことを強制することだ。
生きる価値=仕事ができる、ということなので、当然のごとく仕事ができない者には厳しい。
それは、単に注意するというレベルではなく、もはや生きる価値がないゴミクズ同然の扱い方だ。
私も、このようなタイプには何度も会ってきたが、本当にこのタイプとは分かり合えることはないと悟った。
私のような真面目系クズの人間が、職場の人間関係で悩まされる原因は決まってこの人種だろう。
正直に言えば、一生関わりたくないタイプだ
全ての人間が仕事が第一ではないし、人間の価値は仕事で決まるものではない。
価値観は人によって違うのだ。
このタイプには、そのことを早く気づいてもらいたいものだ……。
意欲的に働くためには
以上のように、意欲的に働く人を三つのパターンに分けてきたが、あなたはこの三パターンのどれかに当てはまっていただろうか。
正直に言って、どれにも当てはまらないのなら、あなたが意欲的に働くことは難しいと思う。
では、この中のどのタイプに属するべきか。
単純に、意欲的に取り組むことだけを目標とするならば、②になればいい。
結婚、あるいはペットを飼う、ということでも可能だ。
自分で守るべきものを作り、仕事に対しての糧を作れば、それだけで今までとは意識が変わるはずである。
だが、理想はやはり①だろう。
自分が熱意を費やせる仕事であれば、間違いなくあなたも①のタイプになれるはずだ。
ただ、残念ながら世間では「仕事は辛いもの」という考えが根付いている。
そのような考えをした者に限って、③のタイプになる可能性が高い。
特に、まだ社会に出ていない学生は、③のタイプこそが社会人だと誤解している者が多い気がする。
これは、自分の親の働き方や教師の教えに、疑問を持たずに生きてきた結果だと思われる。
だが断言するが、③のタイプになっても、いいことは何もない。
前述したように、③のタイプの者は自身でも内心では辛い、苦しいと感じているのだ。
それを必死の思いでかき消し、自分を叱咤し続けている。
そんな考えで意欲を出しても、いずれは頭打ちする。
そのなれの果てが最近世間で話題になっている「うつ病」なのだ。
もし、あなたが③の考え方をしているのであれば、今すぐにその考えを改めてほしい。
そして、仕事で自分の価値を計ることをやめるべきだ。
その考えをしている限り、真の幸せは絶対に訪れないのだから。