2018年ロシアW杯では、日本は予想外の快進撃を遂げた。
開幕前は予選全敗を予想されていたが、蓋を開けてみれば二大会ぶりの決勝トーナメント進出を果たし、ベスト8まで後一歩というところまでベルギーを追い詰めた。
注目すべき点は、このチームが結成されてからまだ二ヶ月足らずしか経っていないことだ。
ワールドカップは四年に一度の大会であり、本来はどの国も数年掛かりでチームを熟成させるのが一般的である。
これは代表選手が普段はそれぞれ別のチームでプレーしているため、連携を高めるためには時間が掛かるためだ。
サッカーは連携が非常に重要なスポーツであるため、日本は戦う前から相当なハンデを背負っていることになる。
そのハンデを背負って尚、ベスト16という結果を残したことは本当に偉業と言っていい。
一体その要因は何だったのか。
私は、この日本の快進撃には、私達の人生を向上させるヒントが隠されているのではないか、と考えている。
そこで今回は、西野ジャパンの快進撃の要因を考察し、私達の人生を向上させるためには何が必要なのかを紐解いていく。
西野ジャパンが躍進したのはなぜなのか
正直に言うと、私は西野ジャパンに嫌悪感を抱いていた。
西野監督個人に恨みはないが、サッカー協会のやり方が気に入らなかったのだ。
大会二ヶ月前に前監督であるハリルホジッチ監督を急遽解任し、選出された23人のメンバーはまるでスポンサーの意向に従ったかのような有名選手をかき集めただけの布陣。
スポーツ新聞でも書かれていたように、端から見れば「忖度ジャパン」にしか思えなかったのだ。
世間も私と同じ感情を抱いていたようで、初戦までの数日間はとてもこれからワールドカップが始まるとは思えないほどサッカー熱が冷めていた。
しかし、結果はご存知の通り、日本は見事に決勝トーナメント進出を果たしている。
初戦のコロンビア戦に勝って以降、メディアは連日のように日本代表を取り上げ、まるで国民総出のようにお祭り騒ぎだった。
少し前まではお通夜のように暗かった雰囲気も、たった一つの勝利で世間の雰囲気を変えてしまったのだ。
「勝利」というのはこれほどまでに人々の気持ちを変えるものなのか、と私はこの時驚愕した。
かくいう私自身も、この頃にはすっかり熱を取り戻していた。
やはり、サッカーファンとしては、自国が勝てば純粋に嬉しくなるものだ。
そういう意味でも、今回のワールドカップは存分に楽しませてもらった。
さて、そんな快進撃を果たした西野ジャパンだが、その要因は一体何だったのだろうか。
私が思うに、これは決して偶然ではない。
その大きな要因は、日本が長所を伸ばす方針に変えたからだ。
具体的に言えば、それはパスサッカーである。
サッカーに詳しくない人のために説明しておくと、日本には元々技術が高い選手が多く存在しており、パスサッカーは非常に理が適っている戦術なのだ。
しかし、前監督であるハリルホジッチ監督はこの日本のパスサッカーを封印していた。
その理由は、日本の欠点を補う方針を取っていたからだ。
日本の欠点とは、フィジカル(体の強さ)である。
今回ワールドカップを見た人ならわかると思うが、世界の選手達は本当に体が屈強な選手ばかりだ。
強靭な体をガシガシとぶつけ、ボールの競り合いに決して負けない力強さが備わっている。
かたや日本にはそのような選手がほとんどおらず、体をぶつけられるとすぐに倒れてしまう印象が強い。
長年、日本はこのフィジカルの弱さをずっと指摘されてきた。
そこでハリルホジッチ監督はそのフィジカル面を徹底的に鍛える方針を取ったのだ。
その徹底ぶりは凄まじく、体脂肪率12%以上の選手は選出しない、という端から見れば厳しすぎる側面も見えたほどだ。
ただ、断っておくが、これは決して悪いことではないのだ。
前述したように、世界には強靭なフィジカルを持っている選手が多く、体脂肪率12%は全く低いうちに入らない。
誰もが知る世界的スター「クリスティアーノ・ロナウド」の肉体を見たことがある人ならわかると思うが、世界で戦うためには技術だけでなくフィジカル面も重要なのである。
しかし、ハリルホジッチ監督の失敗は、そのことに拘りすぎた点だろう。
フィジカルを重視するあまり、日本の長所であるパスサッカーを捨ててしまったのだ。
私はこの四年間、予選から親善試合まで全ての日本代表戦を見てきたが、やはり日本人にはパスサッカーの方が合っていると感じた。
素人目からしても、ハリルホジッチ監督の戦術は選手が窮屈にプレーしているように感じたのだ。
そのことは今回のワールドカップで活躍した選手達を見てもわかる。
驚くかもしれないが、今大会で活躍した、乾、香川、柴埼などは、ハリルホジッチ監督では選ばれる可能性がとても低かったのだ。
彼等はパスサッカーでこそ活きる選手であり、フィジカル重視のサッカーでは自分の良さを発揮することができないのである。
つまり、多くの日本人選手の長所を活かす方針に変えたことこそが、西野ジャパンが躍進した大きな要因だと私は考えている。
真逆の方針を取ってきたハリルホジッチ監督からすれば、この結果は皮肉としか言いようがないだろう。
人生を向上させるための秘訣
同じチームでも、その方針が違えば結果は180度変わってくる。
私は、今回の日本代表からそのことを改めて学んだ。
これは私達の人生にも言えることだ。
多くの人は自分の欠点ばかりに目がいきがちである。
自分の短所に執着するあまり、自分の長所を見失ってしまっているのだ。
せっかくもっている自分の良さも、短所ばかりに捉われていては活かすことができない。
私は、人生の成功を掴むためには、自分の長所を自覚し、短所を受け入れることが重要だと思っている。
完璧な人間などこの世には存在しない。
誰しも必ず欠点はあるのだから。
大事なことは、その欠点をあるがままに受け入れることだ。
欠点を改善しようとする気持ちは大事だが、生まれ持っての性質や能力など、人にはどうしても無理なことがある。
やるだけやって無理ならば、潔くその分野を諦める。
【諦めることの大切さ】でも話したように、無理なこと(短所)に時間を掛けるよりも、自分の長所を磨くことの方がよっぽど大切だ。
今回の日本の快進撃は、私達にそのことを教えてくれるきっかけになったのではないだろうか。
もし、あなたも自分の欠点ばかりに捉われているのなら、今後は自分の長所を活かすことに専念してもらいたい。
それが人生を向上させるための秘訣である。
最後に、今大会2ゴールを決めた乾貴士選手が、テレビでとても大切なことを話していたので、そのことを書き記して記事を締めることにする。
番組内で司会者から「身体が小さくても世界で戦える要因は何があるの?」と聞かれると、乾は「技術を絶対負けないように磨くことしか考えてこなかった」と答えていた。
これこそが人生を向上させるための戦術だ。
追伸
<サッカー協会について>
冒頭でも述べたが、私は協会がハリルホジッチ監督を解任したことについては未だに否定的だ。
結果的には西野監督でベスト16まで進んだが、それはアクマで結果論に過ぎない。
当初の予想通り、三連敗していても全くおかしくなかったのだから。
そもそも、ここで肯定してしまったら、ワールドカップまでの四年間は無意味になってしまう。
ハリルホジッチ監督がアジア予選を突破し、本大会への切符を手に入れたことを決して忘れてはならない。
日本サッカー界の未来のためにも、こんなことは今回限りにして欲しいと切に願う。