教師に向いていない人とはどんな人物だろうか。
この質問に、あなたは何を思い浮かべるだろう。
例えば、人に教えることが苦手な人、または人前で話すことが苦手な人など。
たしかに、それらは教師に向いてない人の特徴といえるかもしれない。
だが、私はそれよりも、もっと明確な答えを知っている。
それはずばり、私のように学生時代を謳歌していない者だ。
教師に向いてない人の本質
学生時代を謳歌していない者は教師に向いていない。
そう断言できるのは、先日、そのことを身を持って体感したからだ。
それを知るきっかけになったのが、試験監督のアルバイトである。
このアルバイトの内容は、高校受験の模擬試験であるため、対応する相手は全員中学生だ。
試験監督といっても、ただ監視するだけでなく、教壇に立ち、答案用紙を配布、試験開始と終了の合図、軽い説明など、やることは意外に多い。
30人以上の中学生からの視線を集め、試験の内容を説明する時は、まるで本物の教師になったような気分だった。
そうしていざ自分が教師の立場になってみると、色々と見えてくるものがある。
生徒全員に配慮することの難しさ、試験を時間通りに進める段取り、不振な生徒には毅然とした態度で接すること、など。
自分が学生の時にはわからなかったが、教師とは案外気を使うことが多い職業だ。
だが、その中でも特に私が感じたことは、教師に向いてない人の「本質」である。
冒頭でも述べたように、その本質とは「自分が学生時代を謳歌していない」ことだ。
なぜなら、学生時代を謳歌していない者は、生徒に嫉妬心を抱いてしまうからだ。
教師という職業は、当然ながら、思春期の学生と毎日接しなければならない。
そのため、どんなに自分が拒んでも、否応にも自分の学生時代が頭をよぎる。
試験監督をしている間、私は彼等(彼女等)に激しく嫉妬心を抱いた。
これから彼等に待っている輝かしい「学生時代」という希望の光……。
どんなに私が欲しいと願っても、それは絶対に手に入らないものだ。
そんな「学生」という立場を所有する彼等に、私は嫉妬心を拭うことができなかった。
もちろん、受験勉強にいそしむ彼等からすれば、私が思っているような気持ちなど持ち合わせてはいないだろうが……。
今回、私はアルバイトであるため、試験が終われば、この気持ちからは解放された。
しかし、教師という職業に就けば、この気持を毎日感じなければならない。
それは本人とっても、生徒にとっても大変不幸なことだ……。
教師とは、生徒の上に立ち、人生の道を示さなければならない。
しかし、教師が生徒のことを羨やんでいては、正しい道など教えられるはずがない。
人間は自分が経験したことでしか、本当の意味で理解したとはいえないからだ。
だからこそ、教師になる人間には、自分が学生時代を謳歌している必要がある。
自分が学生時代を謳歌した経験があれば、生徒達に学生時代の尊さを教えることができるからだ。
だが、私のように学生時代を謳歌しなかった者が、もし教師になってしまったら……。
それはきっと、生徒の気持ちよりも先に、自分の気持ちを優先してしまうだろう。
不祥事を起こす教師達の心理
近年、教師が生徒に手を出し逮捕されるニュースをよく見かけるが、これも、自分が学生時代を謳歌していないことが根本的な原因だと思われる。
私には、逮捕された教師達の気持ちがよくわかる。
きっと彼等も、自分が学生時代を謳歌できなかったことに苦悩していたはずだ。
そのため、教師の立場になっても、青春を取り戻すことに固執してしまったのだろう。
だが、それは大きな間違いだ。
たとえ教師になったとしても、学生時代の青春は取り戻せないのである。
学校という同じ舞台にいても、教師と生徒とは決して対等な立場ではないのだから。
教師とは青春を提供する立場であり、もてなす側の人間だ。
そのことに気づけない者が、教師としての道を踏み外してしまうのだろう。
このような事態を防ぐためにも、学生時代に未練がある人間は、やはり教師になるべきではないと思う。
唯一の例外があるとすれば、それは自分が学生時代を謳歌できなかったことを心から受け止め、生徒には絶対に同じ思いをさせない、という強い信念を持っている者だ。
だが、今まさに青春を謳歌しようとする学生達を目の前にして、その気持ちを持ち続けられる聖人など、果たしてどれくらい存在するのだろうか。
私にはとても無理だ……。
もし、この記事を読んでいる中にも、教師を目指している人がいるのなら、自分にこの問いかけをしてほしい。
自分は生徒によしこまな気持ちを一切持たずに、正しい道を示せるだろうか。
その問いに、少しでもブレることがあるのなら、絶対に教師にはならない方がいい。
あなたが大きな過ちをする前に、冷静になってそのことをもう一度考えるべきだ。
過ぎ去った学生時代に固執するよりも、今の幸せを追求することが人生にとっては大事なのだから。