「あえて困難な道を選ぶ」という間違った選択の仕方について

最近、大きな選択を迫られた。

それは私にとって、人生を揺るがす大きな選択だった。

簡単に言えば、「現状を維持する」「新しいことに挑戦する」かの二択だ。

新しいことに挑戦する方を選べば、私が前々から欲しかった物が手に入る。

しかし、同時にデメリットも大きく、どうしても踏み切ることができなかった……。

私と同じように、決断する時にこのような葛藤で悩んでいる人は多いだろう。

そんな時、ふとネットを見ると、「人生に迷った時はあえて困難な道を選べ」という意見が目についた。

恐らく、誰もが一度はこの言葉を聞いたことがあるはずだ。

世の中には、この意見に賛同する者が非常に多い。

果たして、この「あえて困難な道を選ぶ」という選択の仕方は正しいのだろうか。

いや、私は決してそうは思わない。

今回は、この意見について、私の思想を交えながら深く言及したい。

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「あえて困難な道を選ぶ」の間違い

「あえて困難な道を選べ」「迷ったら難しい方を選べ」など、世の中には、厳しい道を選ぶことを良しとする人が非常に多い。

彼等は何故こうもあえて難しいことに挑戦する方を選ぶのだろうか。

その意味するところは、端的に言えば「自分自身の成長のため」である。

あえて厳しい道に進むことで、人生経験が得られ、それが自分の人間性、ひいては心の成長に繋がる、という論理である。

一見して、これは正論のように思える。

たしかに困難な道を選べば、それを成し遂げた時には飛躍的に成長できることは間違いないだろう。

そのことだけを考えれば、この意見に異論を挟む余地はない。

だが、ここで一つ、見落としてはならない重大な事実がある。

それは、この意見を言う者の大半が成功者」だということだ。

「あえて困難な道を選べ」に賛同する人達のプロフィールを見ると、必ずと言っていいほど偉業を成し遂げている人達だった。

だからこそ、余計に多くの人は「やっぱりこの意見は正しいんだ」と感じるのだろう。

しかし、その考えは非常に危険である。

なぜなら、成功者の言葉には、非」成功者の声が含まれていないからだ。

【「成功者は努力や苦労している」という間違った考え方の危険性】でも話したように、人は成功者の言葉には簡単に耳を傾ける。

挫折して夢破れた者の声よりも、苦労して手に入れた成功談の方が賛美されやすいからだ。

だが、それは言い換えれば、敗者の言葉は蔑ろにされやすいということ。

今回の件で言っても、全ての人があえて困難な道を選んだからといって、成功できる保証など何処にもないのだ。

心の耐性は人によって違う。

逆境をバネに這い上がれる人もいれば、困難に遭遇してそのまま押し潰されてしまう人もいるのである。

成功者がいる背景には、それ以上の数の敗者がいる。

そのような事実を考慮せず、自分の経験談だけで「困難な道」を他人に勧めるのは、あまりにも無責任ではないだろうか。

自分もできるから他人もできる。

この思想は、至極傲慢な考え方だ。

困難な道を勧めるのなら、成功できなかった時のリスクもちゃんと説明するべきである。

それでこそ、本当の意味での助言というものだ。

迷った時の正しい選択の仕方

ここまで少々否定的なことを言ってきたが、もちろん人によっては「あえて困難な道を選ぶ」が正しい場合もある。

大事なことは、自分がどちらの道に適しているかを見極めることだ。

では、その見極め方はどのようにすればいいのか。

それにはまず、自分の人生を振り返ることが一つの指標となる。

自分が今まで困難に遭遇した時に、それを乗り越えることができたか、それとも挫折したのか。

そのことをもう一度思い返してもらいたい。

前者なら、あなたは逆境を乗り越えられる強い心の持ち主だ。

今後も選択を迫られた時は、自分の思う通りに挑戦する道」を選べばいい。

だが逆に、今まで挫折した経験が多いのなら、安易に「困難な道」を選ぶ前に、もう一度よく考えるべきだ。

あえて困難な道を選んだことによって、あなたの心はさらに深い傷を負うことになるかもしれないのだから。

それは下手をすれば、自信を失うことに繋がってしまう。

【自分に自信がない人が確実に「自信」をつける方法】でも話したように、自信を失うことは、生きるうえで何物にも代えがたい損失である。

世間では「楽な道」を選ぶことを逃げだと考える人もいるが、私はそうは思わない。

自分の性質を見極めたうえで、あえてその道を選んだのなら、それは立派な人生の戦略である。

人には、それぞれのペースがある。

自分がまだそのタイミングじゃないと思うのなら、無理に挑戦する必要はない。

焦らなくても、いつか必ず自信を持って「イケる」と思える時がくる。

そういう時にこそ、勇気を持って進むべきなのだ。

何か心に引っ掛かるものを感じるなら、それは「今じゃない!」と、もう一人のあなたが叫んでいるのである。

自分の心の声に素直に従うこと。

これが選択するうえで、最も大切なことである。

そしてもう一つ、選択する時には同じくらい大事なことがある。

それは、今の流れを見極めることだ。

人生には流れがある。

流れが良い時は、普通では考えられないほどに物事がスムーズに進む。

今回、冒頭で話した選択肢について、私は「現状維持」を選択した。

それは今が「流れが良い」と感じたからだ。

流れが良い時は、そのままの流れに身を任せる。

無理に流れに逆らえば、たちまち物事は悪い方向に行ってしまう。

物事がうまくいっていると感じた時は、あえて動かないことも大切なのである。

選択を迫られた時は、是非このことも頭に入れて考えてもらいたい。

間違っても世間の声に流されて、安易に「あえて困難な道を選ぶ」ことはしないで欲しい。

それは真面目な人ほど陥りやすい罠だ。

どうか、自分の心の声を疎かにしないように、くれぐれも注意してもらいたい。

あなたが世間の声に流されず、正しい選択ができることを、私は心から願っている。

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