コミュ障という言葉は、今ではすっかり私達の生活に溶け込んでいる。
本やネットだけでなく、日常会話でも頻繁に使われる言葉だ。
中には、自らコミュ障であることを豪語する者までいる。
ここまでくると、もはやコミュ障であることが一種のステータスのような錯覚を起こしてしまう。
だが、忘れてはならない。
コミュ障という言葉は、本来そんなに軽い言葉ではないのだ。
コミュ障とは言葉の通り、コミュニケーション障害の略である。
よって、本当のコミュ障の人は、物凄く辛い気持ちを抱えているのだ。
私も過去に対人恐怖症(異性恐怖症)で悩んでいたことがあるため、その辛さはよくわかる。
あの頃は人と接することを極度に恐れ、いかにして人と関わらないようにして生きるかを考えていた。
当然、そんな状態では心に余裕が持てず、毎日暗い気持ちで過ごしていた。
だが、そんな自分から脱却するため、色々と思考錯誤し、その甲斐あって今では格段にコミュニケーション能力が向上したと自負している。
そこで今回は、過去の私と同じく、本気でコミュ障を治したいと願う人へ、コミュ障を克服する方法を伝授したい。
コミュ障の間違った思考回路
コミュ障であることの最大の弊害は、相手とのやり取りがスムーズにできないことだ。
会話をしても続かなかったり、相手の言葉にうまく返答できなかったりと、どうしても融通の利く対応ができない。
コミュ障の人は、いつもそのことで負い目を感じている。
だが、コミュ障を克服したいと思うなら、ここで一つ心に留めておかなければならないことがある。
それは「上手く話そう」と思わないことだ。
実のところ、コミュ障になってしまう大きな要因は「上手く話さなければならない」と思い込んでいることにある。
過去の私もそうだった。
「上手く話さなければいけない」という思いが強いために、まともに口を開くことができなかった。
だが、ある時気づいたのだ。
本当に問題なのは、上手く話せないことではなく、平常心でいられないことなのだと。
今だからこそわかるのだが、相手は別にあなたに「面白い話」や「上手い切り返し」など求めていないのだ。
アクマで「普通」の会話が成り立てばそれでいいのである。
「今日は寒いですねー」「朝のニュース見ましたか?」など、この程度の他愛ない会話で十分である。
しかし、コミュ障の人は過度に「上手く話さなければいけない」と思い込んでいるため、普通の会話すらままならない。
その過度な意気込みが不自然さを醸し出し、相手に不信感を与えるのである。
そうではなく、コミュ障の人が目指すべきことは、自然体の自分でいられるようにすることだ。
例えるなら、家族と接している時の自分である。
どんなにコミュ障の人でも、家族と話す時は普通でいられるはずだ。
それは「上手く話そう」などとは微塵も思っていないからである。
その感覚を、家族以外の人間にも適用すればいいのである。
相手としても、「上手く話そう」と意気込まれるよりも、「自然体のあなた」でいてくれた方がずっと楽に接することができるのだから。
コミュ障を克服するためには、まずはこのことを頭に入れておいてもらいたい。
平常心でいられない原因
前項で話したように、コミュ障の人は上手く話そうとする気持ちが強すぎるために、普通の会話すらままならなくなっている。
よって、まずは上手く話すことよりも「自然体でいること」を心掛けるべきだ。
とはいえ……これがなかなかに難しい。
「自然体でいよう」と頭で思ってできるなら、とっくにコミュ障は改善できているはずだ。
では、一体なぜ自然体でいられないのか。
そこには、ある理由が隠されている。
コミュ障を克服したいと思うなら、このことも心に留めておかなければならない。
その理由とは「相手に嫌われること」を極端に恐れているからである。
コミュ障の人は、とにかく他人の目を気にしがちだ。
自分は相手からどう思われているか、嫌われていないだろうか、頭の中でそのことばかりを考えており、相手の顔色を常に伺っている。
当然、こんな心理状態では相手と対等に接することはできない。
このことが原因で、コミュ障の人は自然体ではいられなくなってしまうのである。
もちろん、誰にだって多かれ少なかれ「嫌われたくない」という気持ちはあるだろう。
だが、ここで忘れてはならないことは、「嫌われないこと」と「好かれること」は別である、ということだ。
人には相性というものがある。
【嫌いな人との接し方のコツ】でも話したように、相性の悪い人とはどんなに仲良くしようとしても無理なのである。
あなたが相手から嫌われることを恐れて、仮に何も話さなかったとしても、「何も話さないことがむかつく」と思う人も世の中にはいるのだ。
どんな振舞い方をしても、全員に嫌われないようにすることは不可能である。
だからこそ、嫌われることを恐れることは無駄な労力でしかないのだ。
相手の顔色を伺い、等身大以上の自分を見せようと頑張っても、ただ自分を苦しめるだけである。
もちろん、成人している以上は、ある程度の大人の対応は必要だろう。
しかし、だからと言って無理に好かれようとしてはいけない。
その想いが不自然な態度をすることに繋がり、結果的にコミュ障をさらに加速させることになる。
他人の目を気にせず、自然体の自分でいること。
これがコミュ障の人にとって何よりも大切なことである。
コミュ障を改善するための会話のコツ
前項までは、コミュ障を克服するための心構えを話してきた。
いずれもコミュ障を克服するためには必要不可欠なことである。
しかし、口ベタな人にとっては、そもそも「どのように会話をすればいいかわからない」と悩んでいる人もいるだろう。
いくら心構えを変えたとしても、会話ができなければ意味がない。
そこで、この項目では、コミュ障の人が相手とスムーズに会話をするための具体的なコツを伝授したい。
そのコツとは、ずばり「間」を恐れないことだ。
コミュ障の人は、とにかくこの「間」が嫌いだ。
会話が途切れ、少しでも沈黙があると、それだけで背中に緊張が走る。
まるでこの世の終わりかのように心がパニック状態になってしまうのだ。
だが、その考えは間違いである。
会話に「間」はあってもいいのだ。
コミュ障の人は「間があることはいけないこと」だと思いがちだが、むしろ「間」がない会話の方がマレである。
親しい人との会話でも「間」があることは至って普通のこと。
ましてや、それが初対面の人なら尚更だ。
間違ってもテレビに映る芸能人の会話を参考にしてはならない。
芸能界は元々コミュニケーション能力が高い人が集まっている特殊な世界であり、普通の基準はもっと下にあるのだから。
そういう人達を真似して「間」を作らないようにすることは、コミュ障を治すためには逆効果である。
コミュ障の人がよくする失敗は、「間」が生まれた時に余計な行動をすることだ。
無理に話を繋げようとしたり、脈力のない話を急に持ち出したりと、相手からすると「え?」と言いたくなる行動である。
あなたが必死に「間」を作らないように努力しても、相手にはその意図が伝わらないのだ。
結果的に、あなたは相手からますますコミュ障だと思われてしまうだろう。
あなたの頑張りが、逆にコミュ障の度合いを高めているのである。
これは本当に悲しいことだ。
そうならないためにも、今後は会話の「間」を恐れないで欲しい。
会話が途切れ、何も話すことがなければ、そのまま無言でいいのである。
もし、相手がその「間」を気まずいと感じれば、相手の方から何か話題を振ってきてくれるはずだ。
それがないのなら、相手も「今はこれ以上話さなくていい」と思っているのである。
そういう時は、無理に話を振らなくていい。
もちろん、相手から話を振られた時は、精一杯愛想良く答えるのは当然のこと。
だが、自分が会話の主導権を握るのは、コミュ障を克服してからで十分だ。
コミュ障だと自覚しているうちは、アクマで自然体の自分でいることだけを心掛ければいいのである。
コミュ障を克服する方法
ここまでコミュ障を克服するために色々と話してきたが、結局のところ、コミュ障を克服する方法は一つしかない。
それこそがコミュ障の人にとって最も足りないことだとも言える。
それは、自分に自信を持つことだ。
コミュ障の人は、とにかく自分に自信がない。
自分に自信がないからこそ素の自分を出せず、等身大以上の自分を演じようとするのだ。
それでは自分を追い込むだけであり、コミュ障を克服するどころか、結果的にますますコミュ障を加速させることになる。
【自分に自信がない人が確実に「自信」をつける方法】でも話したように、自分に自信をつけるためには、ありのままの自分を受け入れなければならない。
「コミュ障でもいい」「上手く話せない自分にも価値はある」
そうやって自分自身を何度も肯定することだ。
間違っても「どうせ自分はコミュ障だから……」などと自己否定してはいけない。
自己否定ばかりしていては、あなたの自尊心はどんどん失われていく。
それでは永遠にコミュ障を克服することはできない。
これからは自分のことをコミュ障だと決めつけないことだ。
今はまだ、あなたは固い殻に包まれて「本当の自分」を出せていないだけである。
その殻を破れば、きっと新しい世界が見えてくる。
そのためにも、これからは人と積極的に関わることを心掛けて欲しい。
初対面の人と会話をすることは、最初は「先が見えない暗闇」を歩くような恐怖を感じるかもしれないが、そこで立ち止まっていては何も変わらない。
コミュ障を克服するためには、恐怖を感じながらも一歩ずつ前に進んでいくしかないのである。
本来、人とコミュニケーションを取ることは楽しいことなのだ。
どうか、その楽しさを実感できるようになるまでは、恐怖に負けずに前に進み続けて欲しい。
その先にこそ、あなたの望む本当の世界があるのだから。
あなたが一日でも早くコミュ障を克服できることを私は願っている。